両人にとって、ミカンもリンゴも必要であるとする。
この場合、たとえば「ミカンとリンゴを、A氏は30個と30個、B氏は20個と15個作る」というような「自給体制」は可能である。
もっと合理的な方法があるのだ。
A氏がリンゴだけを60個、B氏がミカンだけを40個作り、その一部を交換することである。
たとえば、ミカン12個に対してリンゴ10個の比率で交換するとしよう。
A氏がリンゴを30個売ると、ミカンを36個入手できる。
したがって、A氏はリンゴ30個とミカン36個を消費できる。
つまり、自給する場合に比べて、ミカン6個だけ余計に消費できるのだ。
もちろん、この取引にB氏が同意してくれなければ、話にならない。
そこで、B氏の消費を調べてみると、リンゴは30個で、ミカンは4(=40マイナス36)個である。
自給体制の場合に、リンゴを30個作ればミカンはゼロなのだから、明らかに有利になっている。
つまり、特化生産と交換によって、取引の双方が自給体制の場合より望ましい状態を実現できるのである。
リカードが見出した「比較生産費の理論」であり、経済学の最も重要なメッセージだ。
なお、交換の比率や交換数量は、ここに挙げたものでなくともよい。
B氏の庭が広くて、「ミカンだけなら68個、リンゴだけなら51個」(ミカンとリンゴの生産比率は前と変わらないことに注意)という場合であれば、「A氏がリンゴに特化し、B氏がミカンに特化すべし」ということを納得しやすいかもしれない。
この場合は、特化した場合の各主体の数量が、ほかの主体より多くなるからだ。
すでに示したように特化と交換が有利なのである。
こうなる理由は、必ずしもすぐに理解できることではないので、以下に説明しよう。
簡単化のため、生産に必要とされる費用は庭に関する地代だけであるとし、両氏とも年間1万円であると対してミカン3個から4個のあいだの値であれば、特化と交換によって、必ず自給体制より望ましい状態を実現できることが確かめられる。
A氏がリンゴの生産に特化した場合のリンゴは、1個167円である。
B氏がリンゴの生産に特化した場合の1個の価格196円より低い。
つまり、A氏は、リンゴをB氏より安く(効率的に)作れるわけだ。
このことを、「A氏はリンゴの生産に絶対優位を持つ」という。
同様にして、B氏はミカンの生産に特化した場合には、ミカンに絶対優位を持っている(A氏が生産すると1個167円であるのに対して、B氏は147円で生産できるから)。
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